Kazuma Kubota "Two of a Kind"
Format: CD/Digital
Label: [...]dotsmark
Released Year: 2013全体的にナルシスティックなアンビエンス、それならばヨーロッパ辺りに有りがちな作家群と就中、久保田一馬の差異とは何であろうか。テキストに沿って考えてみたい。
一曲目"Alone"「街の音」なんていう穏当なフレーズを一蹴するマスタリングに潜む疎外感と裏腹の悪意。疎外されてゆくのはタイトルに纏わり付く抒情的なニュアンスその物ですらある様だ。
二曲目"I Remember You"思い出す事など本当にあるのだろうか?指示対象を欠いた"I"と"You"を演繹するIndustrial=機械神が終には仮想現実(死語になるだろう)の中のささやかな逢瀬をも曖昧に途絶させる。
三曲目"Labirynth"仮に<迷宮>とでも呼ぶしかない何物かの暗喩=カットアップハーシュノイズ。
この作品に於けるノイズの用いられ様は久保田が自己のややもするとナルシスティックになる気質(アンビエント部分に顕著)を相対化する形で案出されたコンポジションに思え、そこにシーンに埋没しない為の久保田のノイズ作家としての批評性、固有性と前述したヨーロッパ作家との差異をとりあえず見て取った。とりあえずと歯切れの悪い言い方をしたのはノイズの技法を早々としゃぶり尽くした挙句(久保田だけの問題では無いのだが)ノイズというジャンルの持つ何かが開示されていく様な爆発力は減衰したのを多少遺憾に思ったからである。そういう意味ではかつてのユニット名義(BloodyLetter)でのデジタルかアナログなのか珍妙なバランス(そこに久保田を感じた)で暴走するカセット作品を惜しむ者である。
しかしながら彼の多作っぷり(見倣うべき)と共に次回作を手にする意欲を与えてくれる内容ではあった。
Two of a Kind
一人は 出し手
一人は 消し手
この文章は筆者・田原康氏から許可を得て代理投稿しました。